日本遺族会が厚生労働省から委託を受け、日本政府がロシア連邦サハリン州スミルヌイフ地区ポペジノに建立した「樺太・千島戦没者慰霊碑」の維持管理状況を調査するため、8月20日から24日までの五日間、水落敏栄本会会長、他事務局職員1人を派遣した。
一行は8月20日、成田空港からユジノサハリンスクに到着。翌21日、小西克己在ユジノサハリンスク日本国総領館副領事の同行を得て慰霊碑調査に向かった。
22日、慰霊碑の維持管理を担うスミルヌイフ市役所を表敬、ベロババ市長らと慰霊碑維持管理について意見交換した。その後、ポペジノ村にある慰霊碑に向かい調査を実施。毎年積雪の影響を受け慰霊碑の床面が傷んでいたが、今年は事前にペンキが塗られ、概ね良好と判断した。午後には、ベロババ市長らに調査結果を報告し、今後の慰霊碑の維持管理を要請した。
ユジノサハリンスクに戻った調査団は23日午後、サハリン州政府文化局を訪ね、平野隆一在ユジノサハリンスク日本国総領事同席のもと、ニコリナ文化・公文書副大臣らと会談を行なった。水落会長から「今後も慰霊碑の管理や、戦没日本人の遺骨の収集にサハリン州政府の支援願いたい」と要請した。
同夜には、樺太・千島戦没者慰霊碑を建設する際、当時、現地政府の窓口となったベラノーソフ元州副知事、ドロフスカヤ元観光局長を招いて、今後も慰霊碑の維持管理、遺骨収集促進に向けサハリン州政府への助言等依頼した。
午前8時30分、雨が降りしきる中、本会から参加遺族76人をはじめ県内外から約650人が、糸満市役所前に参集し、第58回平和祈願大会が開催された。
開会のことばに続き、沖縄戦の犠牲者に対し黙祷が捧げられた。宮城篤正沖縄県遺族連合会会長が挨拶し、本会を代表して、水落敏栄会長(参議院議員)が挨拶した。次いで戦没者代表による平和アピール(別掲)が採択され、平和祈願大会は終了した。
午後9時、水落会長、古賀誠名誉顧問らを先頭に、団旗を掲げた平和行進団は、最後の激戦地となった糸満市摩文仁を目指し、時折激しい雨の降る悪天候の中出発した。参加者たちは、砲弾降りしきる中歩き続けた戦没者が辿った道程を一歩一歩踏みしめながら、犠牲者の冥福を祈り、世界の恒久平和を願い8.3キロを行進した。午前十一時、平和記念公園に到着、沖縄全戦没者追悼式に入場すると、式参列者から大きな拍手で迎えられた。
全戦没者追悼式には、安倍晋三内閣総理大臣や衆参両院議長のほか外務、防衛、厚生労働、沖縄担当の四閣僚が出席し、県内外の遺族ら約五千百人が参列して、正午の時報に合わせ黙祷を捧げた。追悼式では各代表が献花し、宮城会長が追悼のことば(別掲)を述べ、沖縄県の小学生が「平和の詩」を朗読するなど、会場は平和を願う祈りに包まれた。
午後2時、国立戦没者墓苑で本会主催の拝礼式を挙行し、慰霊碑に献花をした後、摩文仁の丘、米須霊域に建立されている各都道府県の慰霊塔を参拝した。
夜には、平和祈願慰霊大行進の本会参加者と沖縄県遺族連合会代表との懇談会を開催した。参加者は意見を交換し、交流を深め、来年も「慰霊の日」に再開することを誓い合った。
令和元年度(2019年度)政府予算は、3月27日の参議院本会議において成立した。本会が昨年12月、地元選出の自民党所属国会議員に対して行った陳情運動の結果、公務扶助料等の据え置きをはじめとする戦没者遺族の処遇改善や、遺骨収集事業関係費及び戦没者遺児による慰霊友好親善事業など概ね要望どおり予算化された。
本会関係では、昨年末の陳情運動を行った戦没者遺族の処遇改善項目に関する要望事項は、全国の遺族代表の熱心な運動を展開したことと、自民党所属国会議員の支援により概ね要望に沿った予算が得られた。
戦没者遺族の処遇改善では、恩給法関係における公務扶助料等は据え置きとなり、扶養加給も同額での支給が決まった。
遺骨収集事業等では、「硫黄島遺骨収集事業」に13億5900万円。「南方・旧ソ連地域遺骨収集事業」には7億5500万円(南方地域の遺骨調査に係る経費が3億100万円、遺骨収集費が3億2700万円等)、遺骨の鑑定費として1億9100万円等がついた。
戦没者慰霊事業等では、本会が厚生労働省から補助を受け実施している「戦没者遺児による慰霊友好親善事業」は、17地域に述べ900人を派遣する事業費として2億5900万円がついた。8月15日の「全国戦没者追悼式挙行経費」が1億5100万円(一県あたり国費参列者55人の2,585人。うち、少なくとも一人は18歳未満の遺族)がつけられた。
昭和館事業では、「昭和館の運営に係る経費」として4億8千万円がついた。
▼参加費10万円
※東京等に集合し、結団式及び渡航に係る説明会を行う。なお、集合場所まで及び解散場所からの交通機関はご自身の手配となる。移動に係る国内交通費及び帰国時の宿泊代、渡航手続手数料等は個人負担となる。
▼参加資格 戦没者の遺児。平成30年度参加者を除き、複数回の応募が出来る。
▼申込方法 在住する各都道府県遺族会事務局へ。
参加者の資格審査に当たり、申込書の記入項目の全てに記入を要するので、事前に申込用紙を取り寄せていただき、記入項目に不明な点(戦没者の部隊名等)があれば各遺族会に相談し条件を満たしたうえで提出願いたい。なお、申込多数の場合は選考となる。
また、巡拝地域や実施時期等は、相手国や交通機関等の事情で変更、延期または中止となる場合があるので、予めご了承願いたい。
なお慰霊友好親善事業には、参加者の高齢化を考慮し、看護師が同行している。
日本遺族会は2月21日、第十六回理事会を東京千代田区の千代田会館で開催した。英霊顕彰運動及び処遇改善運動の経過並びに今後の運動方法、平成30年度本会諸会計予算の第二次補正、平成31年度事業計画及び収支予算などについて審議がなされ、何れも承認された。
会議は午後1時30分、畔上和男専務理事の進行で開会、水落敏栄会長(参議院議員)に代わり宇田川剱雄副会長が挨拶。議長に市來健之助副会長が選出され議事へと移った。
本会の平成31年度事業計画の英霊顕彰運動では、根幹である内閣総理大臣、閣僚の靖国神社参拝が途絶えていることから、引き続き総理、閣僚が参拝されるよう要請するとともに、定着化に向けて努力するとした。また国会議員本人の参拝も大きく減少していることから、参拝されるよう地元選出国会議員に対し強く要請するとした。
処遇改善運動では、公的年金の引き下げや、弔慰金などの支給取りやめ等を模索する動きがあることから、あくまでも国家補償の理念で支給されていることを、機会を捉え広く知らしめる努力を引き続き行うとした。
組織の拡充強化では、次世代後継者である本会青年部の育成に努めるとともに、本会・青年部が両輪となって新しい遺族会の構築に努めるとし、支部にあっては、引き続き魅力ある支部づくりを構築するとともに、戦没者の孫、ひ孫等青年部の組織化、リーダーの育成、さらに、甥、姪を含めた新規会員の獲得に努めるとし、そのため、孫、ひ孫の実態調査を引き続き推し進めるとしている。
さらには、戦没者遺児の慰霊友好親善事業の事業内容の充実、遺骨収集事業への積極的参加。海外等に散逸する戦没者遺留品の調査と早期返還や、社会活動の推進。九段会館跡地利用についての対応、昭和館事業の推進等も承認された。