5月1日、皇太子徳仁親王殿下は第126代天皇に即位された。30年3カ月続いた「平成」が終わり、「令和」に改元された。平成時代の天皇陛下は上皇陛下となられ、皇后陛下は上皇后陛下となられた。戦没者遺族に常に心を寄せてくださった上皇、上皇后両陛下には、どうか末永くお健やかに日々を過されるよう切に願いたい。
本会と皇室との関わりは昭和22年にはじまる。7月14日、全国の遺族代表が皇居に参入し、天皇皇后両陛下、中学生で制服姿の皇太子殿下に拝謁した。その際、天皇陛下から一同に対して「苦しいでしょうが、しばらく辛抱してください。皆で助け合って、明るく生きてください」とお言葉を賜った。遺族代表は「英霊の精神をついで、日本再建のため努力する覚悟であります」と言上し、日本遺族会の創立に奔走した。
爾来、本会の節目の年に行われる創立記念式典には、両陛下または、皇太子殿下のご臨席を仰ぎ、戦没者遺族に寄り添う御姿にしばし感涙した。上皇、上皇后両陛下におかれては、昭和42年の本会創立20周年式典に皇太子同妃両殿下として御臨席を仰ぎ「身命を捨てて国のために尽くした人々とその遺族のことは、日頃私達の深く心にかかっていることでありますが、戦没者遺族の皆さんが、相協力して、肉親を失った悲しみと、生活の苦難を乗り越え、立派に今日をむかえられたことは、誠に喜びに堪えない」とおことばを賜った。そして昭和62年の創立40周年式典後の皇居でのご接見、平成に入り天皇皇后両陛下として六回、本会創立記念式典に行幸啓くださり、お言葉も賜った。
終戦60周年の節目の年にあたる平成17年12月13日には、本会婦人部が「新たなる出発の集い」を開き、47人の戦没者の妻(このときの出席者の平均年齢87歳)が両陛下と親しく懇談し、両陛下から「ご苦労されましたね。お身体大切にして下さい」とお声を掛けられ、そのお優しいお言葉に参加者はただただ涙に咽んだ。と同時に「六十年余に及ぶ労苦が走馬灯のように駆け巡り、その労苦が一遍に吹き飛びました」と、語った妻の言葉が印象的だった。
戦没者遺族に常に寄り添う上皇、上皇后両陛下は、終戦五十周年の平成7年8月には、天皇皇后両陛下、戦後50年にあたって戦没者遺族への心境を詠まれた御製、御歌を直筆で本会に賜った。両陛下が直筆を一般に贈られるのは平成に入ってから初めてのことであった。
また、昭和天皇のお心を受け継ぎ、戦没者の追悼にあたられてきた。全国戦没者追悼式への御臨席はもとより、内外の激戦地に赴かれる慰霊の旅も続けてこられた。沖縄、
東京、広島、長崎、硫黄島。そして、サイパン島、パラオ、フィリピンを訪れ、戦没者をお慰めになられるお姿を拝した。御退位にあたり上皇陛下は「令和の時代が、平和で実り多くあることを、皇后と共に心から願い、ここに我が国と世界の人々の安寧と幸せを祈ります」とお言葉を結ばれた。
令和となり天皇陛下は「即位後朝見の儀」において、「上皇陛下のこれまでの歩みに深く思いを致し、歴代の天皇のなさりようを心にとどめ、常に国民を思い、国民に寄り添いながら、国民の幸せと国の一層の発展、そして世界の平和を切に希望します」と述べられた。
令和元年度(2019年度)政府予算は、3月27日の参議院本会議において成立した。本会が昨年12月、地元選出の自民党所属国会議員に対して行った陳情運動の結果、公務扶助料等の据え置きをはじめとする戦没者遺族の処遇改善や、遺骨収集事業関係費及び戦没者遺児による慰霊友好親善事業など概ね要望どおり予算化された。
本会関係では、昨年末の陳情運動を行った戦没者遺族の処遇改善項目に関する要望事項は、全国の遺族代表の熱心な運動を展開したことと、自民党所属国会議員の支援により概ね要望に沿った予算が得られた。
戦没者遺族の処遇改善では、恩給法関係における公務扶助料等は据え置きとなり、扶養加給も同額での支給が決まった。
遺骨収集事業等では、「硫黄島遺骨収集事業」に13億5900万円。「南方・旧ソ連地域遺骨収集事業」には7億5500万円(南方地域の遺骨調査に係る経費が3億100万円、遺骨収集費が3億2700万円等)、遺骨の鑑定費として1億9100万円等がついた。
戦没者慰霊事業等では、本会が厚生労働省から補助を受け実施している「戦没者遺児による慰霊友好親善事業」は、17地域に述べ900人を派遣する事業費として2億5900万円がついた。8月15日の「全国戦没者追悼式挙行経費」が1億5100万円(一県あたり国費参列者55人の2,585人。うち、少なくとも一人は18歳未満の遺族)がつけられた。
昭和館事業では、「昭和館の運営に係る経費」として4億8千万円がついた。
▼参加費10万円
※東京等に集合し、結団式及び渡航に係る説明会を行う。なお、集合場所まで及び解散場所からの交通機関はご自身の手配となる。移動に係る国内交通費及び帰国時の宿泊代、渡航手続手数料等は個人負担となる。
▼参加資格 戦没者の遺児。平成30年度参加者を除き、複数回の応募が出来る。
▼申込方法 在住する各都道府県遺族会事務局へ。
参加者の資格審査に当たり、申込書の記入項目の全てに記入を要するので、事前に申込用紙を取り寄せていただき、記入項目に不明な点(戦没者の部隊名等)があれば各遺族会に相談し条件を満たしたうえで提出願いたい。なお、申込多数の場合は選考となる。
また、巡拝地域や実施時期等は、相手国や交通機関等の事情で変更、延期または中止となる場合があるので、予めご了承願いたい。
なお慰霊友好親善事業には、参加者の高齢化を考慮し、看護師が同行している。
日本遺族会では、毎年6月23日に沖縄県遺族連合会と共催で実施している「沖縄平和祈願慰霊大行進」が今年で58回目を迎え、参加者を募集している。この事業は、先の大戦で多くの尊い命が失われた沖縄戦を振り返り、砲弾降りしきる中、苦難の撤退を余儀なくされた戦没者が辿った道程を行進し、平和を祈願するものである。
全戦域の戦没者遺族が参加可能であり、家族での参加も歓迎する。特に孫・ひ孫等の青年部が多く参加され、戦争の悲惨さ、平和の尊さを学び、語り継ぐ機会としてもらいたい。
参加募集要項は以下のとおり。
募集要領
▼期間 6月22日(土)~24日(月)2泊3日
▼費用 約3万6千円程度。
※費用には宿泊代、食事代、バス借上げ代、添乗員費用、懇親会費用等が含まれる。
㊟参加人数により費用は異なります。また、自宅から沖縄の往復交費、那覇空港から那覇市内のホテルまでの往復交通費
は個人負担となりますので、各自お手配ください。
▼宿泊 パシフィックホテル沖縄
▼申込先 在住する各都道府県遺族会事務局へ
▼申込締切 5月10日(金)
なお、行進する道程は、糸満市役所から摩文仁までの約8.5キロとなります。
日本遺族会は2月21日、第十六回理事会を東京千代田区の千代田会館で開催した。英霊顕彰運動及び処遇改善運動の経過並びに今後の運動方法、平成30年度本会諸会計予算の第二次補正、平成31年度事業計画及び収支予算などについて審議がなされ、何れも承認された。
会議は午後1時30分、畔上和男専務理事の進行で開会、水落敏栄会長(参議院議員)に代わり宇田川剱雄副会長が挨拶。議長に市來健之助副会長が選出され議事へと移った。
本会の平成31年度事業計画の英霊顕彰運動では、根幹である内閣総理大臣、閣僚の靖国神社参拝が途絶えていることから、引き続き総理、閣僚が参拝されるよう要請するとともに、定着化に向けて努力するとした。また国会議員本人の参拝も大きく減少していることから、参拝されるよう地元選出国会議員に対し強く要請するとした。
処遇改善運動では、公的年金の引き下げや、弔慰金などの支給取りやめ等を模索する動きがあることから、あくまでも国家補償の理念で支給されていることを、機会を捉え広く知らしめる努力を引き続き行うとした。
組織の拡充強化では、次世代後継者である本会青年部の育成に努めるとともに、本会・青年部が両輪となって新しい遺族会の構築に努めるとし、支部にあっては、引き続き魅力ある支部づくりを構築するとともに、戦没者の孫、ひ孫等青年部の組織化、リーダーの育成、さらに、甥、姪を含めた新規会員の獲得に努めるとし、そのため、孫、ひ孫の実態調査を引き続き推し進めるとしている。
さらには、戦没者遺児の慰霊友好親善事業の事業内容の充実、遺骨収集事業への積極的参加。海外等に散逸する戦没者遺留品の調査と早期返還や、社会活動の推進。九段会館跡地利用についての対応、昭和館事業の推進等も承認された。