本会が厚生労働省の委託を受け実施している「戦没者遺留品の返還に伴う調査」事業で、戦没者の遺品の返還運動を推進しているOBONソサエティから本会に照会があった日章旗が、青森県、岩手県、愛知県、島根県でそれぞれ遺族に返還された。
青森県では、米国ロードアイランド州の元陸軍兵士が持ち帰った日章旗が、五戸町出身フィリピン・ミンダナオ島で戦死した、久保田松三郎さんのものと分かり、青森県遺族連合会の調査で遺族が判明した。7月22日、五戸町役場で、久保田さんの甥にあたる久保田松雄さんに若宮佳一町長から日章旗が引き渡された。松雄さんは「七十五年もたって、こんなきれいな状態で届けられるとは驚いた」と感慨深げに話した。
岩手県では、米国ミシガン州の元米兵が戦地から持ち帰り、近隣住民が譲り受けて保管していた日章旗が、陸前高田市出身の神原寅雄さんの長女の津恵子さんに返還された。唯一の形見だった寅雄さんの写真を火災で焼失し、東日本大震災の津波でも自宅を被災するなど苦難の人生を歩んできた津恵子さんは、「うれしいような悲しいような複雑な気持ち。心の中で続いてきた戦争は、これで一つの区切りになると思う」と帰って来た日章旗を手にし、涙ぐんだ。
愛知県では、愛知県犬山市出身で、フィリピン・レイテ島で戦死した和泉則男さんの日章旗が判明し、則男さんの兄の孫にあたる敬也さんに、八月四日、犬山市役所で山田拓郎市長が立ち合い、県連合会の柴田義継会長、市遺族連合会の小嶋毅会長から敬也さんに返還された。敬也さんの母芳子さんは「すごくありがたい。舅からはすごく頭のいい秀才だったと聞いていた」と感慨深げに語った。
島根県では、フィリピン・ルソン島で戦死した松江市乃白町出身の細田仙次郎さんのアルバムが、7月15日、島根県松江合同庁舎で行われた伝達式で、仙次郎さんの長男の善男さんに引き渡された。伝達式には、遺族五人が出席し、善男さんは「おふくろも話してくれなかったので、おやじの思い出はほとんど分からない」としながらも、写真1枚1枚に見入りながら、朝晩に拝んでいる仙次郎さんの仏壇に「返ってきたよと言いたい」と笑顔で話した。