本会が厚生労働省の委託を受け実施している「戦没者遺留品の返還に伴う調査」事業で、戦没者の遺品の返還活動をしているOBONソサエティから本会に照会があった遺品について、愛知県と福岡県で遺族が判明し、遺族に返還された。
愛知県では、フィリピン・ルソン島で戦死した浦山隆三さんの日章旗が長男の隆光さんへ返還された。当初、秋田県遺族連合会の調査で隆三さんが仙北市の出身で、遺族が愛知県在住であることが分かり、愛知県遺族連合会が遺族を捜索し、一宮市に住んでいる隆光さんの所在を突きとめた。
9月18日、一宮市役所で返還式が行われ、中野正康市長から隆光さんと妻の和美さんに日章旗が引き渡された。隆光さんは「抱っこされたこともありませんが、やはり父はいたんだなあ。父も私に会いたかったのでないか」と述べた。
福岡県では、米ミシガン州のエリカ・カーメソールさんが元米兵の祖父から譲り受けた日章旗が、若松区遺族会の調査で、北九州市若松区出身の復員兵だった前田健一さん(享年85歳)のものであることが判明し、長男の俊朗さんに引き渡された。健一さんは南大東島で終戦を迎え、終戦後は生死も分からず家族とは音信不通であったが、昭和二十二年に引き揚げ船で無事故郷に帰還した。
日章旗を受け取った俊朗さんは、健一さんが戻ってきた当時のことを思い出し、「父も日章旗も戻ってきた自分はとても幸運。まだ遺骨すら戻ってこない人もおり、戦後は終わっていない」と話した。