日本遺族会は、戦没者の遺品の返還活動を続ける米国の「OBONソサエティ」に協力している。今回本会に照会があった元米兵が戦地から持ち帰った日章旗について、持ち主の本籍地である秋田県と茨城県の支部遺族会で調査した結果、それぞれ遺族が判明し、返還式が行われ、日章旗は無事遺族に引き渡された。
秋田県では、昭和20年にフィリピンのルソン島イザベラ州ナギリアンで戦死した大館市出身の近藤久六氏が戦地に持参した日章旗を調査し、秋田県遺族連合会の協力で、長男の小畑久男さんが大館市内に在住していることが判明した。
日章旗は、ワシントン州在住のマイケル・ノリスさんの父親(元海軍兵)が他界後に、遺品を整理していた時に父親が戦地で記した日記とともに見つかった。日記には日章旗を入手した経緯が書かれており、マイケルさんは遺族へ返還するべきだと考え、OBONソサエティに遺族の捜索を依頼していた。
5月11日、大館市遺族会の総会が開かれ、中沢誠也秋田県遺族連合会会長(本会常務理事)から小畑さんに日章旗が手渡された。受け取った小畑さんが、「ようやく父の魂を抱くことができた気がする」と涙ながらに語ると、会場からは「おかえり」と声がかかった。
茨城県では、昭和19年にパラオのペリリュー島で戦没した水戸市出身の白石義雄氏が戦地で持っていた日章旗を茨城県遺族連合会で調査し、いとこの石田恒子さんが水戸市内に住んでいることが分かった。
日章旗は、オハイオ州在住のメアリー・ブラウンさんが、元米兵だった父親が戦地から持ち帰ったものを譲り受け、OBONソサエティへ返還の依頼をしていた。
5月18日、水戸市役所で返還式が行われ、茨城県遺族連合会の新堀弘子常務理事(本会監事)から石田さんへと日章旗が引き渡され、石田さんは、「(白石さんは)優しく兄のようだった。本人が戻ったよう」と喜んだ。
遺族側の希望で、日章旗は平和の尊さを伝える資料として水戸市へ寄付され、今後は市の平和記念館で展示するなどの活用が検討されている。